可塑剤工業は、第2次世界大戦まではセルロイド工業とともに発展してきました。セルロイド用の可塑剤として使われていた樟脳※は日本が主な産地だったこともあり、戦前日本はセルロイドの生産量世界第1位を誇っていました。
欧米では樟脳に代わる可塑剤の研究が進められ、日本でも昭和初期にDBPやTCP、DMP、DEPなどをドイツから輸入して使用するほか、順次国産化を進めていきました。昭和10年には(株)大八化学工業所がTCPの初の国産化に成功しています。 一方、塩ビ用の可塑剤としては、上記の可塑剤などがセルロイド用から転用され、戦時中から一部軍需用の電線被覆材などに使用されていました。1943年(昭和18年)には終戦前の最大生産量DBP263トン/年、TCP202トン/年に至っています。 戦後、1950年頃から塩ビ樹脂工業が急激に発展したのに伴ってDBP、TCP等よりも性能が優れた可塑剤への関心が高まり、DOPをはじめ各種の多様な可塑剤が研究され製造されるようになっていきます。前述した塩化ビニール樹脂工業懇話会の可塑剤部会が設置され、活躍したのはこの頃です。 |
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| 戦時中から一部で電線被覆材などに使用 |
| ※ |
樟脳:クスノキなどの精油の主成分(分子式はC10H16O)。「カンフル」という別名があり、活性化の手段を比喩的に「カンフル剤」というのは、かつて樟脳が強心剤として使われていたことから来ている。現在は血行促進や鎮痛、消炎のための医薬品として使われている。
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| TCP |
: |
リン酸トリクレシル |
| DMP |
: |
フタル酸ジメチル |
| DEP |
: |
フタル酸ジエチル |
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DOPの登場 |
可塑剤の原料は酸とアルコールです。この二つを様々に組み合わせることで多様な種類の可塑剤を作り出すことができます。その代表的なものが、「フタル酸エステル」と総称される一群のエステル化合物です。 フタル酸エステルは塩ビとの相溶性や耐寒性など、塩ビ用の可塑剤に求められる様々な性質をバランスよく備えているため、戦後幅広く使われるようになっていきました。 フタル酸エステルの中でもDOPの性質が優れていることは、終戦後すぐにアメリカの文献などから知られていました。 DOPの原料となる無水フタル酸とアルコール(2-エチルヘキサノール)は戦前から国産化が進められていたため、DOPの生産体制は戦後いち早く整えられました。1949年から生産が始まり、1951年にはDBPに代わって生産量第1位の可塑剤となっています。 |
JISの制定 |
可塑剤の規格に関しては、戦時中すでに日本標準規格として定められていましたが(1940年第405号、1942年第344号)、それらはセルロイド用途が中心でした。戦後、塩ビ用可塑剤の発展に伴い、使用量の増えてきたDOP、DnOP、DBPについて規格を定める必要性が高まってきました。 可塑剤工業会の前身であるプラスチック協会可塑剤部会は、通産省からの委託を受けて1950年ごろからJISの検討に入りました。1953年には可塑剤部会が独立してできた可塑剤工業会に検討が受け継がれ、1955年5月にフタル酸エステルJISK-6751〜6754として制定されました。このJIS制定により、メーカーは品質の維持・改善や生産の合理化を進めやすくなり、ユーザーである塩ビ製品の製造・加工業者にとっては原料の購買・使用の合理化が図れるようになりました。 |
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巨人軍・長嶋茂雄選手、デビュー戦で4打席4三振
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| 写真提供=共同通信社 |
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可塑剤工業会の母体となった塩化ビニール樹脂工業懇話会がプラスチック協会へと発展した1950年ごろから塩ビの生産が軌道に乗る一方、アメリカから様々な可塑剤についての情報やサンプルが入ってくるようになりました。そして、塩ビの幅広い用途ごとに求められる多様な性能を満たすためには、DOPだけでなく様々な種類の可塑剤が必要なことや、一種類の可塑剤で対応できない場合にはそれぞれに特長を持った可塑剤を配合すると、いろいろな用途に使用できることが分かってきました。
その後10年ほどの間に、加工性の良いBBPなどの「フタル酸エステル」のほか、耐寒性を持ったDOA、DIDAなどの「アジピン酸エステル」や難燃性の高い「塩素化パラフィン」、安定剤の効果もある「エポキシ化大豆油」、移行性の小さい「ポリエステル系可塑剤」など、現在出荷されている可塑剤の大半がメーカー各社によって開発・製造されました。
1950年代には可塑剤の生産量はDOPを中心に大幅に伸びていくこととなります。 |
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塩ビ製品の良さを広く知ってもらうため、1950年代、百貨店などで展示会がよく行われた。
(3大メーカー・ビニール展,1953年/S.28) |
| BBP |
: |
フタル酸ブチルベンジル
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| DOA |
: |
アジピン酸ジオクチル |
| DIDA |
: |
アジピン酸ジイソデシル |
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原料アルコールの製造法の変遷 |
■製造法の進歩で原料アルコールの
大量供給が可能に |
DOPの原料となるアルコールについては、当初1949年(昭和24年)には、花王石鹸(株)〈現・花王(株)〉と第一工業製薬(株)が、椰子油から「還元法」によりn−オクタノールを製造していました。
同年10月には、協和発酵工業(株)が、発酵により得られたブタノールから2−エチルヘキサノールを製造する「発酵法」をスタートさせました。 一方、1950年に、アセチレンからブチルアルデヒドを経て2−エチルヘキサノールを製造する「合成法」が、三建化工(株)と新日本窒素肥料(株)(現・チッソ(株))で開始されました。
その後、1957年頃から石油化学工業の発展が始まり、1960年以降、各社で石油化学による2−エチルヘキサノールとその他の原料アルコールの大量生産が行われるようになりました。 |
用途の多様化 |
塩ビ製品は可塑剤を使った「軟質塩ビ」と使わない「硬質塩ビ」に分けられますが、戦後の用途拡大は軟質塩ビ、いわゆる“ビニール”が中心となりました。
1947年に一般用フィルム、1949年には塩ビレザーなど、軟質塩ビ製品の工業化が続きました。フィルムやレザーは、ベルト、レインコート、時計バンド、鞄、ハンドバッグ、履き物(ケミカルシューズ)、椅子、ソファーなど、ファッション、日用品、雑貨の分野で広く使われるようになりました。
電線被覆材としては第二次大戦中から使われていましたが、戦後、1950年から塩ビ被覆電線の本格的な工業化が始まりました。
1951年には農業用ビニールフィルム(農ビ)の研究も始まり、1953年には水稲の苗代に初めて利用されて米穀の収穫量が3割も増収したという成果がありました。 |
| ※ |
石油化学工業:石油を原料とし、化学反応を利用して合成樹脂や合成繊維、薬品な ど様々な化学製品を作る工業。大規模な設備を使った大量生産が可能。 |
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1月
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米国ジョン・F・ケネディ大統領が就任
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4月
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ソ連がガガーリン氏を乗せ、世界初の有人衛星船打ち上げに成功
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8月
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ルリンに東西の壁が出現
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10月
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大鵬関、柏戸関が同時横綱昇進
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東京都の常住人口が1,000万人を突破。世界最大の都市に。
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堀江謙一氏が小型ヨットで太平洋横断に成功
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初の国産電子複写機完成
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ビートルズがデビュー
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キューバ危機勃発
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戦後初の赤字国債発行を決定
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アニメ「鉄腕アトム」登場
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吉展ちゃん誘拐殺人事件が発生
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6月
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黒部川第4ダム完成
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新千円札(伊藤博文)発行
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ケネディ大統領、ダラスで暗殺される
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シャープとソニーが電子式卓上計算機を完成
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経済協力開発機構に加盟
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海外旅行の自由化
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新潟地震(M7.5)発生
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東海道新幹線が開通、「ひかり」「こだま」登場
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東京オリンピック大会開催
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| 初期の農ビ使用風景 |
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