ニュースリリース

中国ラップフィルム用DEHAの使用禁止について

 平成17年10月13日に中国上海系新聞第一財経日報に「世界的に使用禁止されているPVCラップが中国で販売されている」および「塩ビ(PVC)ラップは塩ビモノマーの含有が高く、可塑剤としてDEHAが入っており、これらが溶出して人体にはいると発ガン、ホルモンの分泌・かく乱をもたらす為、人体に大きな危害を与える」との誤った新聞報道がなされました。

その後、10月20日には上海市食品薬品監督所の所長が塩ビモノマーの含有量が1ppm以下の場合は人体に無害であり、可塑剤の有害性に対しては根拠がないとのコメントを公表、10月21日には、中国衛生部が正規のPVCラップは人体に対して無害であるとラップの発ガン説を否定しました。
しかし、10月25日中国国家質量監督検験検疫総局がDEHAの使用を禁止する通報並びに公告2005年155号を出しました。

 

[中国国家質量監督検験検疫総局の通報内容]
1.基本状況
1988年の「食品包装用PVC成型品衛生標準」(GB9681-88)のなかにVCM<1ppmと規定しており、サンプル分析の結果、問題ないことを確認した。
2003年公表の「食品容器、包装材料用助剤使用衛生標準」(GB9685-03)の中には使用可能な65種類の添加剤を規定しており、DOAは使用(使用量35%以内)が認められているがDEHAはこの基準に入っておらず使用禁止されている。一部のラップからDEHAを使用していることを確認した。
2.当局の今後の処置
(1) 以下の内容の告示を発出
DEHA含有或いはVCM>1ppmのPVC食品包装材の輸出入の禁止
PVC食品包装材製造におけるDEHAの使用禁止。
DEHA含有或いはVCM>1ppmのPVC食品包装材の使用禁止。直接に肉類、調理済み食品及び油性食品への使用禁止。「DEHAを含有しない」標識があるPVC食品包装材の使用にあたって直接に肉類、調理済み食品及び油性食品への使用禁止。
(2) 食品ラップの輸入、生産、販売、使用について監督を強化する。
(3) 食品包装材衛生標準の改正
(4) PVC食品包装材の輸出入について法定検査を実施。

 

上記の中国での新聞報道、対処については、以下多くの疑問点及び問題があります。
(1) PVCラップが世界的に禁止されている。
: 禁止されている国はありません。
(2) PVCの発ガン性
: PVCそのものは発ガン性物質ではありません。塩ビモノマーは発ガン性が指摘されておりますが、中国当局の発表にもありますように1ppm以下であれば問題なく、日本国内でも食品衛生法で1ppm以下の規格基準が設定されております。
(3) DOAは「食品容器、包装材料用添加剤使用衛生基準(GB9685-03)の中で認められているが、DEHAは認められていないので使用禁止
: DEHA(ジ2エチルヘキシルアジペート)はDOA(ジオクチルアジペート)の一種類で、通常の総称ではDOAと表現されております。

 

DEHAは世界中で食品包装用に認められた可塑剤です。
DEHAは、かって「内分泌撹乱疑似物質」としてリストアップされ、日本においても各種安全性について評価され、現在は内分泌撹乱作用はないことが明白になっており、発ガン性についてもIARC(国際ガン研究機関)ではグループ3(ヒトに対する発ガン性には分類出来ない物質)に分類されております。
(DEHAに関する各種情報は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)の化学物質総合情報提供システム http://www.safe.nite.go.jp/japan/db.html からDEHA(CAS番号103-23-1)を検索することにより見ることが出来ます。)
DEHAはFDA(米国食品医薬品局)、BGA(ドイツ連邦保険局)で食品包装用に認可されており、世界中でラップフィルム用に使用されております。
日本においてもJHPA(日本塩ビ食品衛生協議会)の自主規格で食品包装用添加剤として認められた可塑剤です。
日本の塩ビラップ用途にはFDAに認可され、JHPAの自主規格にも認められたDINA(ジイソノニルアジペート)が使用されております。これは1980年代前半にDEHAの発ガン性が疑われた時に、国内のラップメーカー各社は疑わしい物質は使わない方針でDINAに切り替えました。しかし、その後DEHAに発ガン性はないことが確認され、世界各国ではDEHAに戻りましたが、日本ではDINAがそのまま使用され続け現在に至っております。

 

可塑剤工業会としましては、広く社会に役立っている各種可塑剤を安心してお使いいただけるものにする為、今後も情報収集、広報活動など努力を続けて参ります。
以上