ニュースリリース

“現状において人や生態系に対するリスクは考えられない” ~日本初の「DEHPの詳細リスクアセスメント」発表される~

 産総研(独立法人産業技術総合研究所)化学物質リスク管理研究センターは、2001年より代表的な化学物質について詳細リスク評価を進めており、このほど(1月中旬)第1号として詳細リスク評価書「フタル酸エステル-DEHP-」を丸善(株)から発行しました。
NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)のフタル酸エステル類リスク評価研究会で、中核的な役割を担ってきた産総研が、これまでの評価結果を取り纏めた詳細リスク評価書です。

本書は、これまで、目的に応じて作成されてきた部分的な評価書とは異なり、日本初の総合的なDEHPの詳細リスク評価書です。内容的には、ここ数年の環境省、厚生労働省、国土交通省、東京都他のDEHPの環境測定データを総括し暴露データを明らかにするとともに、これまでのDEHPの安全性についての研究成果を評価し、人および生態に対して影響を与える濃度(耐用1日摂取量:TDI)について検討されています。さらに、この暴露データと影響濃度をもとにリスクの有無を明らかにしたもので、リスクの結論は次のように纏められています。

 

1.人に対するリスク
人に対しては、特殊な医療治療や職域でのケースを除いた、一般の人(0歳から成人まで)についての評価を行った結果、「現状においてリスクは懸念されるレベルにはない。」と評価。
2.生態に対するリスク
人に対するリスクと同様に「現状においてリスクは懸念されるレベルにはない。」と評価。

 

 評価書全文は製本として発行されていますが、その要約やデータおよびレビュアーのコメントは産総研化学物質リスク管理研究センターのホームページで見ることが出来ます。
http://unit.aist.go.jp/crm/mainmenu/1.html
なお、DEHPに続いて1、4ジオキサン、トルエン及びビスフェノールAや他の物質についても順次同様の詳細リスク評価が行われる予定です。

当工業会としましても、本書はこれまでDEHPの安全性について一抹の不安を感じていた関連業界ならびに一般の人々の疑問に対して、問題点ごとにリスク評価が行われており、その不安を一掃するに足る材料であると考えています。
また、当工業会公報誌「可塑剤インフォメーションNo.18」でも紹介することにしていますが、皆様方に是非ご一読して頂きたい一冊です。

 

《詳細リスク評価書発行までの経緯》
 フタル酸エステル類については、国内及び海外の諸機関での有害性評価やリスク評価等の報告や取り纏めが行われているが、有害性と暴露影響、排出実態と環境濃度との関係については未だ十分に検証されていません。
こうした状況を踏まえ、リスク評価に基づく適切な化学物質管理のあり方を検討するため、NITEの中に、産学官の有識者等から構成されたフタル酸エステル類リスク評価管理研究会(以下研究会と言う)が平成14年7月に設置されました。
研究会では、フタル酸エステル類の中で最も生産量の多いフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP と言う)について、有害性情報、リスク評価情報等を収集・討議するとともに、産業界からはアンケート調査等で生産・使用・廃棄、社会情勢への対応状況等についての情報収集を行い、更に自治体での取り組み状況も調査されています。

2003年5月中間報告書が作成され、NITEのホームページに公表されました。
引き続き、産総研の化学物質管理研究センターで更に詳細に検討された結果、詳細リスク評価書として纏められ、NITEの委員会においてレビューを受けこのたび完成発行されたものです。
さらにNITEでは、この詳細リスク評価書の結果をもとに、「管理のあり方」(リスク管理の現状と今後のあり方)を纏め、この結果は既にインターネットで公表されています。

http://www.safe.nite.go.jp/risk/kenkyukai.html
以上